スレート屋根の塗装は意味ない?効果やご自宅の最適解をプロが解説

スレート屋根 塗装 意味ない アイキャッチ

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この記事の監修者兼ライター

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羽柴文吾

福岡県在住の兼業ライター。住宅資材の総合商社にて、スレート屋根や外壁サイディング、新建材の営業から施工補助まで幅広く経験。現在はエネルギー関連事業に従事している。丙種ガス主任技術者と第二種電気工事士の資格を保有。豊富な現場経験と専門知識を活かし、暮らしに役立つ情報を発信している。趣味は映画鑑賞。

「スレート屋根の塗装は意味がないって聞いたけど、本当かな?」と疑問を感じていませんか?

スレート屋根への塗装は、意味があります。ただし、効果があるのは「屋根材の保護」や「見た目の改善」に限られます。屋根の防水機能が回復しない点は、おさえておきましょう。

 

本記事では、塗装で期待できる効果と限界について整理しました。さらに、実際の失敗事例やメンテナンス方法の比較もわかりやすく解説します。

 

記事を読めば、築年数や劣化状況に応じた最適なメンテナンス方法がわかります。無駄な出費を避けながら、家族が安心して暮らせる住まいを守りましょう。

 

スレート屋根の塗装は意味ないの?【保護と見た目の改善には有効】

スレート屋根 塗装 きれい

スレート屋根への塗装は、屋根材の保護と見た目をきれいにする効果があります。

 

スレート屋根は、雨水を吸いやすいセメント素材でできているため、塗膜が傷むと劣化が進みやすいのが特徴です。そのため、塗装がはがれた状態を放置すると、次のような不具合が起こりやすくなります。

  • 屋根材の反りやひび割れが発生する
  • 凍害(吸水した水分が凍結、膨張して割れる現象)が起こる
  • 苔や藻が繁殖しやすくなる

塗装をすることで、新しい塗膜が雨水を弾き、劣化の進行を抑える効果が期待できます。あわせて、外観もきれいになり、印象が良くなります。

 

【注意】スレート屋根塗装で期待できないこと

スレート屋根へ塗装しても、次のような効果は期待できません。

塗装の限界を理解しておけば、「期待外れだった」と後悔せずにすみます。ご自宅に必要なメンテナンスを知るためにも、内容を詳しく把握しておきましょう。

 

屋根の防水性能は回復しない

スレート屋根 構造 防水シート

出典:国土技術政策総合研究所 研究資料

 

塗装をしても、スレート屋根の防水性能を回復させることはできません

 

なぜなら、屋根材は表面を流れる雨水の量や方向をコントロールするものの、雨を完全には防げないからです。ご自宅を雨漏りから守る最終的な砦は、屋根材の下にある防水シート(ルーフィング)になります。

 

防水シートの寿命は、20〜30年程度が目安です。築20年を過ぎる頃から、劣化し始めます。

 

防水シートが寿命を迎えている場合は、表面をどれだけ丁寧に塗装しても、雨漏りを根本的に解決することはできません。

 

塗装では屋根材や内部の劣化は補修できない

スレート屋根 下地 腐食

塗装は、あくまで屋根材の表面を保護するのが役割です。すでに発生している屋根材のひび割れや反り、内部の野地板の腐食などを補修する効果はありません

 

塗料で表面的なひび割れを埋めることはできますが、効果は一時的なものになります。そのため、屋根材そのものが寿命を迎えて脆くなっている場合は、塗装をしても意味がありません。屋根材自体を新しくする必要があります。

 

また、屋根材の下にある野地板や防水シートが劣化している場合も、表面の塗装では対処できません。野地板や防水シートを補修するには、屋根材を剥がして下地を直接確認し、修復する必要があります。

 

【失敗事例】スレート屋根の塗装で後悔した3つのパターン

塗装をしても、屋根の状況によっては後悔してしまうことがあります。

 

本章では、スレート屋根の塗装でよくある3つの失敗パターンを解説します。

ご自宅の状況と照らし合わせながら、同じ失敗をしないためのヒントにしてくださいね。

 

失敗①:再メンテナンスが必要になった

スレート屋根 劣化 寿命

よくあるのが、築20年以上で塗装をしたものの、数年で不具合が再発してしまうケースです。

 

屋根材自体の寿命が近づいている場合、塗装だけでは劣化を抑えられません。数年でひび割れや剥がれが起き、結局「カバー工法」や「葺き替え」を行うケースも見られます。

後悔のポイント

数年後に工事をやり直せば、塗装費用は無駄になってしまいます。築20年を超えている場合は、「塗装費用の安さ」だけでなく、「あと何年持たせたいか」という長期的な視点でメンテナンスを選ぶのが大切です。

 

失敗②:雨漏りした

スレート屋根 縁切り タスペーサー

業者に勧められるまま安価で塗装をした結果、雨漏りするトラブルも起きています。

 

原因の多くは、「縁切り(えんきり)」という工程が省かれるためです。縁切りとは、塗装によって密着したスレート屋根材の重なり部分に、意図的に隙間をつくる作業を指します。

 

縁切りを行わなければ、屋根の内部に入り込んだ雨水が排出されなくなり、結果的に雨漏りを引き起こしてしまいます。

後悔のポイント

適切な隙間を確保するには、「タスペーサー」という部材の設置や、手作業での縁切りが必須です。見積もりの段階で、縁切りの工程が含まれているか、必ず確認しましょう。

 

失敗③:DIYしたことで余計に費用がかかった

スレート屋根 塗装 色ムラ

「費用を浮かせたい」という理由でDIYに挑戦したものの、最初から専門業者に頼むより高くついてしまうケースはよくある失敗です。

 

屋根の上は足元が不安定なうえ、劣化したスレート屋根は踏み込んだだけで、割れやすい状態になっていることがあります。DIY作業の途中で屋根材を踏み割ってしまう事例は多く、補修費がさらにかかる原因になります。

 

また、高圧洗浄が不十分なまま塗装を行ったため、すぐに塗膜が剥がれてしまい、塗り直しが必要になるケースも多いです。

後悔のポイント

破損した屋根材の交換や失敗した塗装のやり直しには、多額の費用がかかります。転落事故の危険性も高いため、安易なDIYは避け、必ず専門業者に依頼しましょう。

DIYで塗装できる範囲については、以下の記事で詳しく解説しています。リスクを正しく把握するためにも、ぜひ参考にしてください。

>>【注意】スレート屋根の塗装を自分でできる条件とは?リスクや費用も

 

スレート屋根全体のメンテナンス方法【耐用年数/費用相場】

スレート屋根 メンテナンス方法

スレート屋根のメンテナンス方法には、以下の3つの選択肢があります。

築年数や屋根材の劣化状況によって、最適な方法は異なります。それぞれの特徴と費用相場を理解し、ご自宅に合った方法を見極めましょう。

 

屋根塗装

スレート屋根 塗装 意味ない

既存の屋根材の上から新しい塗料を塗る、最も手軽なメンテナンス方法です。

 

耐用年数 約10~15年
(使用する塗料による)
費用相場 40〜80万円
メリット 費用が最も安い
工期が短い
デメリット 屋根材自体の寿命は延びない
下地の補修はできない
適した状況 築10〜15年
屋根材に大きな損傷がなく、
色褪せや苔が気になる場合
築年数が比較的浅く、屋根材に広範囲なひび割れや劣化が見られない場合に適しています。

 

カバー工法

スレート屋根 カバー工法 構造

カバー工法は、既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねて施工する方法で、「重ね葺き」とも呼ばれます。

 

耐用年数 約30~40年
(使用する屋根材による)
費用相場 100~230万円
メリット 耐久性や断熱性が向上する
葺き替えより安い
廃材が少ない
デメリット 下地が劣化していると施工できない
屋根が少し重くなる
適した状況 築20~30年
屋根材に劣化はあるが、
下地は健全な場合
塗装ではメンテナンスが難しいものの、まだ下地がしっかりしている場合に最適な選択肢です。

カバー工法については、以下の記事で詳しく解説しています。葺き替えより安く仕上げられますが、施工にはいくつかの条件があるため確認しておきましょう。

>> スレート屋根のカバー工法は大丈夫?費用・デメリット・他工法の比較

 

葺き替え

スレート屋根 葺き替え

葺き替えは、既存の屋根材をすべて撤去し、下地から新しく施工できるメンテナンス方法です。

 

耐用年数 約30~40年
(使用する屋根材による)
費用相場 150~250万円
メリット 屋根が根本から一新される
下地の補修ができる
施工できる屋根材の選択肢が多い
デメリット 費用が最も高い
工期が長い
廃材が多く出る
適した状況 築25年以上
雨漏りしている、または
下地が劣化している場合
屋根を根本から直せるため、工事後は長期間安心して暮らせます。

 

そもそもスレート屋根の寿命は?

スレート屋根 ノンアス初期 劣化

スレート屋根材の寿命は、次のとおりです。

期間 耐用年数 アスベストの
有無
1960年代~2006年頃 30~40年 アスベスト入り
1990年代~2008年頃 15~25年 ノンアス(初期)
2006年~現在 20~30年 ノンアス

 

スレート屋根材の寿命に15〜40年と大きな差がある理由は、アスベスト(石綿)規制の影響です。

 

かつてスレート屋根には、セメントを強くするための補強材として、アスベストが使われていました。強度が安定していたため、寿命も長い傾向がありました。

 

しかし、健康被害の問題から段階的に規制が進み、2006年には全面的に使用が禁止されています。

 

この影響が大きかったのが、1990年代〜2008年頃の「ノンアスベスト初期」 に製造・施工された屋根材です。この時期は、アスベストの代替技術がまだ確立されておらず、耐久性の低い製品が多く流通しました。

 

そのため、この時期のスレート屋根では、築15年前後から「著しいひび割れ」や「屋根材そのものの剥がれ(層間剥離)」が多発する傾向があります。

新築時の図面や仕様書で、施工時期を確認しましょう。築20年を超えている場合は、専門業者に見てもらうのがおすすめです。

 

アスベストに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。ご自宅がアスベストを含んだ屋根材の場合は、申請や処分費用がかかるため、確認しておきましょう。

>>【プロ監修】スレート屋根にアスベストは入ってる?見分け方や対処法

 

屋根を塗装する?しないほうがいい?【ご自宅の最適解は?】

スレート屋根 塗装 判断基準

「塗装すべきか、それとも別の方法を選ぶべきか」という判断は、築年数と屋根材・下地の劣化状況で決まります。

 

判断基準の目安を、以下のケースで解説します。

ご自宅の状況と照らし合わせて、最適なメンテナンス方法を見つけましょう。

 

築15年未満:見た目が気になるなら屋根塗装

築15年未満で、屋根材のひび割れや欠けが軽微な場合、見た目だけなら塗装できれいにできます。

 

この段階なら、屋根材自体の強度が保たれていることが多いため、塗膜で屋根材表面の劣化の進行を遅らせることもできます。

 

ただし、「ノンアスベスト初期」の屋根材は例外です。耐久性が低いため、塗装ではなく最初からカバー工法や葺き替えを検討した方が良いでしょう。

ご自宅の屋根材がノンアス初期かどうか分からない場合は、専門業者に確認してもらいましょう。

 

築15年〜20年未満:劣化レベルや希望によってわかれる

築15〜20年の時期は、屋根材の劣化レベルと今後のライフプランによって、選択肢が分かれます。

劣化レベルによる選択肢

  • 劣化が軽微 → 塗装
  • 劣化が進んでいる → カバー工法・葺き替え

ライフプランによる選択肢

  • 10年以内に住み替え予定 → 塗装
  • 長く住む予定 → カバー工法・葺き替え

まずは専門業者による屋根診断を受けて、現在の状態を正確に把握することが大切です。診断では、ひび割れや欠けの有無、チョーキングの程度、雨漏りの兆候、下地(野地板)の状態などを確認します。

 

劣化が軽微であれば塗装で表面を保護できますが、複数のひび割れ・大きな欠け・雨漏りの兆候が見られる場合は、カバー工法や葺き替えを選ぶほうが安心です。

 

また、今後のライフプランを考えておくことも大切です。10年以内に住み替えや大規模リフォームを予定している場合は、最小限のコストで済む塗装が合理的でしょう。

 

一方、20〜30年住み続ける予定であれば、防水シートまで更新できるカバー工法や葺き替えのほうが、長期的に経済的といえます。

 

築20年以上:下地の状態が良好ならカバー工法

築20年以上経過している場合で、防水シートや野地板の劣化が見られないなら、カバー工法がおすすめです。

 

カバー工法を選択すれば、次のような効果が期待できます。

  • 断熱・遮音・防水性能が向上する
  • 葺き替えより安くなる
  • 塗装より長持ちする

ただし、カバー工法が適用できるのは、下地が健全な場合に限られます。天井に雨染みがある場合は、下地が腐食している可能性が高いため、葺き替えのほうが安心です。

外壁塗装のタイミングと合わせてカバー工法を行うと、足場代を共有できるため費用を抑えることができますよ。

 

築20年以上:下地の状態が悪い・屋根材に凹凸がある場合は葺き替え

下地の腐食が進んでいる場合や、屋根材に凹凸がある場合は、葺き替えが必要です。

 

次のような症状がある場合は、カバー工法ではなく葺き替えを検討しましょう。

  • 天井に雨染みや黒ずみがある
  • 屋根材に反りや波打ちが見られる

上記の症状は、屋根材だけでなく下地(野地板や垂木)まで劣化が進んでいることを示しています。カバー工法は表面を覆うだけなので、板材などの下地の問題までは解決できません。

 

葺き替えであれば、劣化した防水シートや腐食した野地板を必要に応じて新しいものと交換できます。屋根や下地の寿命が延びるため、工事後は長期間安心して暮らせます。

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信頼できるメンテナンス(塗装/改修)業者を選ぶには?

スレート屋根 業者選び ポイント

適切なメンテナンス方法を選んでも、施工業者の選び方を誤ると期待した効果が得られません。

 

まずは、候補となる業者が信頼できるかどうかを、口コミや実績、資格で判断しましょう。「一級塗装技能士」や「外装劣化診断士」などの資格を持つ職人がいる会社は、技術力が安定している傾向があります。

 

業者を絞り込んだら、つぎは見積書の内容を確認します。見積書には、以下の項目が明記されていることが大切です。

  • 使用する塗料のメーカー、商品名
  • 施工工程(下塗り、中塗り、上塗りの回数)
  • 縁切り、タスペーサーの設置
  • 足場代の内訳
  • 保証内容

これらが揃っていない見積書は、工事内容が不透明で、後々トラブルが起きやすくなります。不安な点があれば、納得できるまで説明してくれる業者を選ぶことが大切です。

安心して任せられる相手かどうかが、仕上がりの満足度を大きく左右します。

 

まとめ|塗装は「屋根材の保護」と「見た目の改善」には有効

スレート屋根 まとめ

スレート屋根の塗装は「屋根材の保護」と「見た目の改善」には有効です。ただし、「防水機能の回復」や「屋根材自体の補修」は期待できません

 

防水性能を回復させるには、カバー工法か葺き替えを検討しましょう。

塗装の効果

  • スレート屋根を塗膜で保護し、劣化を遅らせる
  • 色あせや苔を塗装で覆い、見た目をきれいにする

スレート屋根に塗装できる条件

  • 築15年未満で屋根材の劣化が軽微である
  • ノンアス初期でないスレート屋根である

ご自宅に最適なメンテナンス方法は、築年数と屋根材・下地の劣化状態によって決まります。「塗装で十分なのか」「カバー工法が必要なのか」は、実際に屋根を点検しなければ正確には判断できません。

 

まずは専門業者に無料診断を依頼し、屋根の現状を正確に把握することから始めましょう。適切な診断と提案を受けることで、無駄な出費を避けられます。

プロの意見を聞くことで、ご家族が安心して暮らせる住まいを守ることができますよ。

 

【Q&A】スレート屋根塗装のよくある質問

結局、塗装は意味あるんですか?ないんですか?

塗装は「屋根材の保護」と「見た目の改善」という点で意味があります。しかし、防水性能の回復は期待できません。

>> スレート屋根の塗装は意味ないの?【保護と見た目の改善には有効】

 

築18年ですが、塗装で大丈夫ですか?

築18年であれば、屋根材と下地の劣化状態によって判断が分かれます。専門業者に屋根診断を依頼し、状況と適切なメンテナンスの提案を受けましょう。

>> 築15年〜20年未満:劣化レベルや希望によってわかれる

 

ノンアス初期の屋根材かどうかはどうやって確認しますか?

ノンアス初期の屋根材は、製造時期と製品名から確認できます。ただし、建築時の図面や仕様書がない場合、見た目では判断が難しいといえます。

>> 【見分け方】わが家のスレート屋根にアスベストは含まれる?

 

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