屋根修理にラバーロック工法はNG!?危険性と正しい修理方法を解説

この記事の監修者兼ライター

徳良 仁
千葉県在住の兼業ライター。建設業界で現場経験を15年(建築3年・電気12年)経験したのち、日本最大の大手アパレルの出店開発部門で発注者としての施工監理を2年経験。現在はGAFAの1社で施設立ち上げ部門の管理職として従事。1級建築士・1級電気工事施工管理技士・第一種電気工事士も保持。日々の幸せは家族団らんを穏やかに過ごすこと。

ラバーロック工法とは、瓦同士をコーキングで固定する屋根補修の方法です。台風や地震による瓦の「ズレ」や「落下」を予防する際に勧められる方法で、工事が簡単で費用が安くすむ点が最大の魅力です。
しかし屋根をラバーロック工法で工事した場合、施工方法を誤ると雨漏りリスクを一気に高めてしまうため、この工法を採用するかどうかは慎重に判断する必要があります。
そこでこの記事では、ラバーロック工法で屋根修理をする危険性やよくある誤解、トラブル事例をわかりやすくまとめました。また、ラバーロック工法にかわる部分補修や信頼できる屋根修理業者の選び方も詳しく解説しています。
記事を読めば、ラバーロック工法を選んでいいかの判断がつくだけでなく、ご自宅に最適な屋根のメンテナンス方法がわかります。屋根を正しい方法でメンテナンスし、長く安心して暮らせる家を維持していきましょう。
この記事でわかること
- ラバーロック工法の危険性・よくある誤解・トラブル事例
- ラバーロック工法にかわる部分補修3選
- 信頼できる屋根修理業者の選び方チェックリスト
- 屋根の無料点検・診断を有効活用するタイミング4選
目次
ラバーロック工法とはコーキングによる屋根修理方法の1つ
ラバーロック工法とは、コーキング材で瓦と瓦の間を接着して、動かないように固定する屋根の補修方法です。おもに強風や地震による瓦のズレや落下の防止のための工事になります。
ラバーロック工法の最大の魅力は、費用の安さです。材料がコーキング材のみのため、屋根全体を工事してもかかる費用は10~30万円と、葺き替えや漆喰の塗り替えよりも圧倒的に安くすませることができます。

ラバーロック工法で屋根を修理する危険性
ラバーロック工法はお手軽で安価な点が魅力ですが、下記のような危険性がともなうため、安易に工事するのはおすすめはできません。
- 雨漏りリスクの増加
- 瓦が落ちたときの被害が増大

雨漏りリスクの増加
ラバーロック工法は、下記の理由から雨漏りするケースが多発しています。
- 誤った場所を施工してしまう
- 通気性が低下する
それぞれを詳しく解説します。
誤った場所を施工してしまう
ラバーロック工法は施工自体は簡単ですが、誤った場所を施工すると雨漏りするリスクが一気に高まります。
瓦屋根は本来、瓦同士に適度な隙間があることで雨水を段階的に排水する構造です。瓦の隙間をコーキング材でむやみに塞げば、排水ルートが遮断されるため、雨水が屋根内部に溜まって雨漏りにつながります。
誤った施工方法 | 雨漏りの原因 |
瓦の隙間をすべてコーキングで埋める | 雨水の流れが阻害され、本来流れるはずの水が屋根の下に侵入する |
既存の瓦のクリーニングが不足する | コーキング材の接着力が低下し、短期間で剥がれて隙間から雨水が侵入する |
屋根の谷周辺でコーキングが多用される | 屋根の谷部分は水が集中するため、排水不良を引き起こし雨水が侵入する |
※瓦の隙間をすべてコーキングで埋めた場合のイメージ図

通気性が低下する
ラバーロック工法で工事した結果、屋根内部の通気性が低下して雨漏りを引き起こしてしまうケースはよくある話です。また湿気がこもることで、屋根下地である板材まで腐ってしまうケースも多く発生しています。

瓦が落ちたときの被害が増大
ラバーロック工法は瓦同士を固定する方法です。もし瓦が落ちる場合は、複数の瓦がまとまって落下する危険性があります。
瓦同士が接着されることで、一見すると耐震性や耐風性が高まるように思えますが、コーキング材の接着力だけでは、大地震には耐えられません。瓦が落ちてしまった際の被害はむしろ大きくなってしまいます。
ラバーロック工法のデメリット
ラバーロック工法は屋根トラブルを引き起こす危険性があるうえに、下記のようなデメリットもあります。
- 経年変化で屋根の見た目が悪化
- 将来的なメンテナンス費用の増加

経年変化で屋根の見た目が悪化
コーキング材は、下記の理由から時間が経つにつれて、見た目が悪化する傾向があります。
- 経年劣化による変色
- コーキング材の粘着性によって埃や汚れが付着
つねに紫外線にさらされている屋根は、通常よりも早くコーキングが劣化してきます。そのため、数年で変色したり剥離したりするケースは珍しくありません。
また、時間の経過とともにコーキング材の粘着性のある表面に埃や汚れが付着し、コーキングが黒ずんでくることは多いです。
将来的なメンテナンス費用の増加
ラバーロック工法で工事した屋根は、次回メンテナンスする際に費用が割高になってしまいます。
なぜならラバーロック工法で瓦同士をコーキング材で接着したがために、部分的な修理や瓦の交換が必要な場合でも、コーキングを丁寧に剥がす手間が増えてしまうからです。
工期も長くなるうえ、剥がす作業によって瓦が破損するリスクまで増えてしまいます。

雨漏りはラバーロック工法では防げない
ラバーロック工法は、正しく施工すれば雨漏り対策として効果的だと誤解されています。ですが、実際にはラバーロック工法だけで雨漏りの根本的な解決はできません。
なぜなら、瓦と瓦を接着するだけの表面的な処置では、下記のような雨漏りの原因は改善できないからです。
- 防水シートの劣化や破損
- 谷樋の詰まり
- 板金の腐食

ラバーロック工法を検討してもいいケース
ラバーロック工法での屋根修理は、長期的に見ればメリットよりリスクが勝る工事工法ですが、下記のケースなら検討してもよいといえます。
ラバーロック工法での修理を検討してもよいケース
- 数年だけ瓦屋根を持たせたい
- 一時的にでも屋根を修理しておきたい

ラバーロック工法の正しい施工方法
ラバーロック工法では、瓦の山の左側と下部分だけをL字型にコーキングするのが正しい施工方法です。L字型に施工すれば、瓦をしっかり固定しながらも、瓦の下に必要な通気を確保できます。
水が流れる部分にはコーキングしていないので、排水ルートが塞がって雨漏りの原因になることはありません。

【注意】ラバーロック工法での修理は悪徳業者に多い
ラバーロック工法は施工が簡単で特別な技術や資格を必要としないため、悪徳業者が手軽に参入しやすいのが特徴です。
実際、「無料点検」を口実に訪問し、必要のない屋根修理を勧めてくる業者の手口としてラバーロック工法が利用されるケースは少なくありません。
下記は、悪徳業者によくある手口なので注意してください。
- 「このままでは雨漏りする危険がある」と不安を煽る
- 「今すぐ修理が必要」などと緊急性を強調する
- その場での契約を迫る

悪質業者に騙されないための対策
悪質業者に騙されないためには、以下の対策が効果的です。
- 突然訪問してきた業者には安易に点検させない
- 故意に破損させる業者もいるため屋根に上らせない
- その場で契約せず十分に検討する時間を取る
- 信頼できる別の業者にセカンドオピニオンを求める
- 契約する場合は必ず書面で内容を残す
上記の対策を実践して、悪質業者によるトラブルを未然に防ぎましょう。

悪質業者チェックリスト
下記に、悪質業者かどうかがわかるチェックリストを用意しました。悪質業者から身を守るためにも、ぜひ活用してください。
- 突然訪問してきて無料点検を提案する
- 「今すぐ修理が必要」と緊急性を強調する
- 「特別価格」や「今だけ割引」などと言って即決を迫る
- 見積もりが不自然に高額または安すぎる
- 工事内容や手順について詳しい説明がない
- 施工実績や資格について具体的に示せない
- 会社の所在地や連絡先が明確ではない
- クーリングオフについての説明がない
ラバーロック工法よりも効果的な部分補修
ラバーロック工法は手軽で安価に瓦同士を固定する方法ですが、トラブルを根本解決できないうえ雨漏りリスクも高くなります。
瓦のズレや落下を予防して長期的に安心して暮らすためには、ラバーロック工法よりも下記の方法がおすすめです。
- 部分的な瓦の差し替え
- 棟瓦の漆喰補修

部分的な瓦の差し替え
割れや欠け、ズレなど部分的なトラブルは、瓦の差し替えが効果的です。たとえば、強風で数枚の瓦が飛ばされた場合でも、差し替えのみで元の状態に戻せる場合はたくさんあります。
ただし、瓦が廃盤になっている場合や経年劣化で色味が変わっている場合、新品の瓦と既存瓦で色の差が出ることも考えられます。同じ瓦で交換できるかどうか、施工業者にあらかじめ確認しましょう。
棟瓦の漆喰補修
棟瓦がズレてしまっている場合は、ラバーロック工法よりも漆喰補修のほうがおすすめです。なぜなら、コーキングで固定するよりも古い漆喰を除去して新しい漆喰を詰め直すほうが、瓦の落下を防げるだけでなく雨漏り対策にもなるからです。
もし、ラバーロック工法を検討した理由が棟瓦のズレや落下にあるなら、漆喰補修で解決できる場合はたくさんあります。ただし、ズレや損傷が大きい場合や棟自体が歪んでいる場合は、棟瓦を一度解体して積み直す「棟取り直し工事」が必要な点はおさえておきましょう。

築30年以上は屋根全体リフォームのタイミング
瓦屋根のメンテナンススケジュールの目安は、下記のとおりです。
項目 | 頻度 | 内容 |
定期点検 | 年1回程度 | 台風シーズン後の秋頃の点検が理想的 強風や大雨の後には臨時の点検も推奨 |
部分修理 | 10〜15年ごと | 部分的な瓦の差し替えや釘増し打ちなど |
棟瓦の点検・補修 | 10〜15年ごと | 古い漆喰を除去して新しい漆喰を詰め直す |
葺き直し | 20〜30年ごと | 瓦を一度すべて外し、防水シートを新しくしてから瓦を並べ直す |
葺き替え | 50年目以降 | 長期間の使用で破損や劣化が目立つ場合、瓦も含めてすべて新しいものに交換する |
日本瓦自体の耐用年数は30~100年ですが、築30年を経過した場合は、屋根は部分修理よりも全体工事を検討する段階であることはおさえておきましょう。なぜなら瓦よりも先に、瓦の下に敷かれている防水シートが20年程度で劣化するからです。
屋根は雨水の侵入を瓦材、次に防水シートというふうに、2段階で食い止めます。そのため瓦自体は寿命が来ていなくても、防水シートが劣化する築20~30年で雨漏りするケースはたくさんあります。

葺き替えと葺き直しの選び方
屋根全体工事には、下記の2種類があります。
屋根全体工事の種類 | 内容 |
葺き直し | 既存の瓦を一度撤去して防水シートを新しく張り替えた後、再び瓦を並べる |
葺き替え | 瓦も含めてすべて新しいものに交換する |
葺き替えと葺き直しのどちらにするかは、瓦の耐用年数や築年数、工事の目的などによって判断しなければなりません。
瓦自体に寿命がきていたり屋根材自体を替えたりしたい場合には、葺き替えを選ぶ必要があります。いっぽう、瓦は再利用して防水シートや屋根の下地板だけ交換や補修をしたい場合は、葺き直しを選ぶことになります。
瓦屋根工事の費用相場
瓦屋根工事の費用相場は下記のとおりです。
部分補修 | 価格帯 | 適用範囲 |
瓦の交換 | 11,000円~ | 数枚〜十数枚程度の部分的な破損 |
釘増し打ち | 800円〜1,500円/枚 | 耐風性・耐震性の強化が必要な場合 |
棟瓦の漆喰補修 | 3,000円〜6,000円/m | 漆喰の劣化が見られる場合 |
屋根全体工事 | 価格帯 | 適用範囲 |
葺き直し | 8,000円〜15,000円/㎡ | 瓦は良好だが防水シートの交換が必要な場合 |
葺き替え | 15,000円〜25,000円/㎡ | 瓦と防水シートの両方を交換する場合 |

【チェックリスト付き】信頼できる屋根修理業者の選び方
信頼できる屋根修理業者を選ぶポイントは、下記のとおりです。
屋根業者選びのポイント
- 資格や実績があるか
- デメリットも教えてくれるか
- 報告書を提出してくれるか
- 見積もり内容は詳細か
- 万全なアフターサポートはあるか

資格や実績があるか
信頼できる屋根修理業者は適切な資格を持ち、実績を積んでいます。
資格や経験を確認するポイントは、以下のとおりです。
- 瓦屋根工事技士などの専門資格を持っているか
- 住宅瑕疵担保責任保険に加入しているか
- 創業から5年以上経過しているか
- 過去の施工事例(ビフォーアフター写真など)を見せてくれるか
- 地元での評判や口コミは良好か
- 建設業許可を取得しているか(大規模工事の場合)
- 明確な会社住所と連絡先があるか
資格や実績があることで、技術的に適切な施工が期待できるだけでなく万が一のトラブル時にも責任ある対応が期待できます。

デメリットも教えてくれるか
説明を聞く際のチェックポイントは、下記のとおりです。
- 提案する工事のデメリットや制限事項も説明してくれるか
- 他の選択肢も提示してくれるか
- 「絶対に必要」などと過度に不安をあおらないか
- 質問に対して明確かつ具体的に回答してくれるか
- 「今しかできない」などと急かさず、検討する時間を与えてくれるか
- 自社の得意分野と不得意分野を正直に話してくれるか
- 予算に応じた複数の提案をしてくれるか

報告書を提出してくれるか
屋根は自分ではなかなか確認できない場所なので、契約前の調査や工事後について、報告書をもらっておくと安心です。
報告書に関するチェックポイントは、下記のとおりです。
- 点検時に写真付きの詳細な報告書を作成してくれるか
- 工事前の状態と工事後の状態両方の写真を撮影しているか
- 報告書に発見した問題点と対処方法が明記されているか
- 報告書の内容をわかりやすく説明してくれるか
- 報告書はデータも保管してくれるか
- 報告書に基づいて今後のメンテナンス計画を提案してくれるか

見積もり内容は詳細か
適正価格か判断するためにも、見積もり書では下記のポイントをチェックしましょう。
- 材料費と工賃が明確に分けて記載されているか
- 使用する材料の種類やメーカー、数量が明記されているか
- 工事の範囲や面積が具体的に示されているか
- 足場の設置費用が含まれているか(別途の場合はその旨が明記されているか)
- 廃材の処分費用が含まれているか
- 追加料金が発生する可能性のある条件が明記されているか
- 保証内容と期間が明記されているか
- 支払い条件や方法が明確か
- その他、見積もり条件の記載があるか

万全なアフターサポートがあるか
アフターサポートに関するチェックポイントは、下記のとおりです。
- 明確な保証期間と保証内容が提示されているか
- 保証書を発行してくれるか
- 工事後の定期点検サービスはあるか
- 緊急時の連絡体制は整っているか
- 過去の顧客への対応実績を聞けるか
- 工事後に不具合が生じた場合の対応方針が明確か

屋根の無料点検・診断を有効活用するタイミング
屋根の無料点検・診断は、適切なタイミングで活用することでトラブルを未然に防止できます。
専門業者による屋根点検を検討するタイミングは、下記のとおりです。
タイミング | 詳細 |
築10年以上経過した住宅 | 問題がないように見えても点検をおこなうことで、小さな問題を早期に発見できる 早めの対応で大規模修繕を防ぎ、結果としてお得になる |
大型台風や地震などの自然災害の後 | 台風や地震の後は、瓦のズレや防水シートの損傷などが発生している可能性がある |
雨漏りなどのトラブル | 雨漏りは放置すると被害が拡大し、修理費用も高額になる 小さなシミや湿気を感じるなど室内に雨漏りの兆候が見られたら点検をすぐに依頼する |
外壁塗装などのリフォームを検討するとき | 費用がかさむ足場代なども同じタイミングであれば安価ですむ |

まとめ
本記事では、ラバーロック工法の危険性や代替方法、屋根修理業者の選び方などについて解説しました。
ラバーロック工法による屋根修理で知っておくべきポイント
- 安価で対応できるが雨漏りリスクなどの危険性が多い
- 屋根トラブルを根本的に解決できない
- 長期的に見ると高額になる可能性が高い
- 悪質業者が最初に勧めてくる工法である
- ラバーロック工法よりも他の工法の方が効果的であるケースが多い
屋根のラバーロック工法は施工が簡単で低コストという魅力がある一方、雨漏りなどのトラブルを引き起こしかねないハイリスクな工事方法といえます。短期的な場合は検討してもいい場合もありますが、長期的に安心して暮らしたい場合は選ばないようにしましょう。

屋根修理におけるラバーロック工法でよくあるQ&A
ラバーロックがダメな理由は?
ラバーロック工法は、雨漏りしやすく見た目も悪くなるなどの危険性があるからです。
ラバーロック工法に代わる方法は?
部分的な瓦の差し替え、もしくは漆喰補修などがあります。
屋根のメンテナンススケジュールは?
年に1回程度の定期点検に始まり、屋根の状態に応じて10〜15年ごとに補修が必要です。また、台風や地震の後には臨時点検をして、必要に応じて補修もおこないましょう。
この記事の監修者兼ライター

徳良 仁
千葉県在住の兼業ライター。建設業界で現場経験を15年(建築3年・電気12年)経験したのち、日本最大の大手アパレルの出店開発部門で発注者としての施工監理を2年経験。現在はGAFAの1社で施設立ち上げ部門の管理職として従事。1級建築士・1級電気工事施工管理技士・第一種電気工事士も保持。日々の幸せは家族団らんを穏やかに過ごすこと。
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