電気設備

【専門家が解説】漏電の修理費用はいくら?自分でできる対処法とプロが行う調査、工事内容も解説

この記事の監修者兼ライター

監修者画像

小野雄人

東京大学工学部電気工学科・東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修士課程を修了。鉄道の信号部門に関連する研究開発業務や、鉄道会社の現場での勤務を経験。2022年に独立・フリーライターに転身、記事の執筆や監修・編集を手掛けている。保有資格:技術士(電気電子部門)

最近、家の電気設備の調子が悪い、漏電ブレーカーがよく落ちる、といったトラブルに見舞われてはいませんか?

電気設備のトラブルが起きたときは、基本的には電気工事の専門業者に調査や修理を依頼することになります。しかし、電気設備のトラブルは頻繁に起きることではないので、依頼にかかる費用の相場がわからないという方がほとんどではないでしょうか?

そこで、本記事では漏電の調査や修理にかかる費用の目安を紹介します。業者が提示してくる費用が高すぎるのではないかと思ったときや、逆に安すぎて怪しいのではないかと思ったとき、参考にしてください。

また、漏電が疑われるときに自分でできる対処方法や、専門業者に依頼するべき状況もあわせて紹介します。

これって漏電?代表的な7つの症状とは

漏電の様子

「漏電」とは、電気が本来の流れるべき経路から外れたところを流れることです。

家庭の電気の配線や、家電製品などには、決まった電気の通り道以外には電気が流れないように「絶縁」がされています。しかし、配線の被覆が傷ついて破れたり、家電製品の筐体が経年劣化したりすると、電気が本来の通り道を外れて、漏れ出すことがあります。この現象が漏電です。

漏電が発生しているときの代表的な症例は下記のようにいくつか挙げられます。

漏電の代表的な症状

  • 漏電ブレーカーがよく落ちる
  • 雨の日に漏電ブレーカーが落ちることがある
  • 特定のコンセントや特定の照明だけが使えなくなった
  • 照明や電気機器が誤作動を起こすことがある
  • 電気代が急に上がった
  • コンセントや照明スイッチ、電気機器が異常に熱い・焦げ臭いにおいがする
  • 建物の金属部分や電気機器に触れるとピリピリする

漏電によって、漏れ出た電気に直に触れると、感電して命に関わる場合があります。また、電気が流れることで火花が散って可燃物に引火したり、発熱した物質が発火したりすることで、電気火災が発生することもあります。漏電していることがわかったときは早急に対処しましょう。放置することは非常に危険です。

漏電火災の危険性や予防方法については、下記の記事で解説しているので、参考にしてください。

>> 他人事ではない漏電火災の危険性|対処法と予防策も解説

漏電ブレーカーがよく落ちる

ブレーカーの種類

近年の住宅の分電盤(住宅への電気の入口の役割と、各部屋への電気の分配を果たす設備)には「漏電ブレーカー」という設備が設けられています。漏電遮断機という名前の場合もあります。

漏電ブレーカーは名前の通り、漏電が起きていることを検知すると落ちて、電気の流れを遮断します。漏電ブレーカーが頻繁に落ちるときは、住宅内のどこかで漏電が発生している可能性が極めて高いです。

雨の日に漏電ブレーカーが落ちることがある

雨の日など、湿度の高い日に限って漏電ブレーカーが落ちることがあります。この場合は、水分によって漏電が発生している可能性があります。水は電気を通しやすいので、空気中の水分や、雨漏りによって浸入した水が、電気が漏れる原因と考えられるのです。

特定のコンセントや特定の照明だけが使えなくなった

漏電は特定の部屋やコンセント、機器だけで発生することがあります。ある部屋のコンセントだけが使えない、特定の照明だけがつかないときは、その箇所で漏電が発生している可能性を視野に入れてください。

ただし、漏電とは別の原因である可能性もあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

>> コンセントが使えなくなった!原因と対処法を徹底解説

>> 急に電気がつかなくなった原因は?自分でできる確認方法と対処法

照明や電気機器が誤作動を起こすことがある

漏電が発生していると、電気の流れが不安定になるので、照明の明るさがチカチカと変化することがあります。また、漏れた電気によって電気機器が不正に動作したり、動作を止めたりする可能性も考えられます。

電気代が急に上がった

漏電が常に発生している状態になると、電気が無駄に消費されてしまうので電気代が上がります。以前と比べて電気代や電気の使用量が急に上がった場合は、漏電が発生している可能性があります。

ただし、既に説明したように、近年の住宅の分電盤には漏電ブレーカーが設けられていて、電気代が上昇するよりも前に漏電を検知できます。漏電によって電気代が大幅に上がるのは、漏電ブレーカーが故障している、あるいはそもそもない場合や、住宅の電力メーターから漏電ブレーカーまでの間で漏電が発生していて漏電ブレーカーでは検知できない場合などの、比較的珍しいケースに限られます。

漏電ブレーカーが正常に動作していても、検知できない程度の小さな漏電が発生している可能性は否定できません。しかし、その小さな漏電によって増加する電気代はわずかで、おそらく1ヶ月あたり100円にもなりません。電気代が急激に上がったときは、漏電以外の原因を先に探った方がよいでしょう。下記の記事を参考にしてください。

>> 電気代が急に高くなった原因は漏電?簡単に確認できる方法も解説

コンセントや照明スイッチ、電気機器が異常に熱い・焦げ臭いにおいがする

電線から発火

漏電が発生すると、電気が流れた物質が発熱することがあります。また、発熱によって温度が上昇すると発火する可能性もあります。具体的には、コンセントや電気のスイッチ、電気機器が異常に熱い、焦げ臭いといった症状になってあらわれます。

火災や有毒ガスの発生につながる、非常に危険な状況なので、早急に対処しましょう。問題が起きている部屋の電気回路を、分電盤の安全ブレーカー(部屋ごとに、あるいはコンセントごとに設けられているブレーカー)を落として遮断すると安心です。

建物の金属部分や電気機器に触れるとピリピリする

金属部に触れるとピリピリする

漏電した電気は本来は意図していないところを流れるので、例えば建物や電気機器の金属部分を通ることもあります。金属部分に手を触れたり近づけたりすると不自然にピリピリする場合は、漏電した電気が流れている可能性があります。

ピリピリするのは既に軽度の感電を起こしている状態です。感電は命に関わる危険な現象で、数十mA程度の比較的弱い電流が漏れている場所であっても、手を触れれば自力では離れられなくなります。ピリピリする場所には決して身体を触れないようにしましょう。このケースも、漏電が起きていると思われる部屋の電気回路は、安全ブレーカーを落として遮断した方がよいでしょう。

【プロに依頼】漏電調査/修理の内容と費用相場

漏電は、放置すると感電や電気火災にもつながる危険な現象です。一刻も早く対処したいところですが、漏電の詳しい調査や、漏電している箇所の修理は、電気工事士の資格を持っていなければ行えません。電気は目に見えず、電気の知識がない人が漏電に対処するのは、危険や困難を伴うので、電気工事士法という法律によって無資格で電気設備に触れる作業は禁止されています。自分で対応すると費用を節約できるどころか、お金よりも大事なものすら失うことになるかもしれません漏電の詳細な調査や修理は、必ず電気工事士の資格保有者が在籍しているプロの電気工事業者に依頼してください。

しかし、業者に依頼する以上は費用がかかるのが気になるところでしょう。ここでは、漏電の調査や修理の内容とかかる費用の目安を紹介します。

漏電調査

漏電調査にかかる費用の相場と、漏電調査の手順を紹介します。なお、金額はあくまで目安です。調査の規模などによって大きく変動する可能性があります。

漏電調査の費用相場

漏電調査を電気工事業者に依頼する場合は、調査費用は5,000円~30,000円程度が目安です。調査の難易度によって値段は変動します。天井裏、床下などを調べる必要があると、調査費用が高くなる傾向にあります。

また、この金額は作業そのものに対する費用で、別途作業者の出張費用などがかかります

漏電調査の手順

電気工事業者による漏電調査は、概ね以下のような手順で行われます。なお、電気の配線に触れるような作業の実施には電気工事士の資格が必要なので、資格を保有していない方は決して実施しないでください。

漏電調査の手順

  1. 現場確認/ヒアリング
  2. 分電盤の測定
  3. 漏電箇所の測定

1.現場確認/ヒアリング

漏電が発生した状況についてヒアリングを行います。下記のような内容を尋ねられるでしょう。

  • 漏電が発生した時間帯
  • 当時の天候
  • 漏電発生の原因として思い当たること
  • 照明やコンセントが使えなくなっていないか、それはどこか
  • 異常な音や臭いが発生していないか、発生している場所はどこか

漏電が発生したときの状況は、漏電の原因や発生箇所を特定する上で重要な情報です。漏電の調査を依頼するときは、状況をできるかぎり詳しく伝えましょう。聞き取りを行った上で、現場の設備の確認を行います。

2.分電盤の測定

分電盤の外観を調査して、分電盤やブレーカーが破損していないか、配線をつなぎとめるためのねじがゆるんだり、配線が外れかかったりしていないかなどをチェックします。

外観に異常がない場合は、測定器を用いて、異常な電流が流れている配線がないか、地面との間の電気抵抗が小さくなっている(地面へ電気が流出しやすくなっている)配線がないかなどを確認します。

3.漏電箇所の特定

漏電している電気回路が判明したら、より細かく漏電箇所を特定していきます。その回路に接続されている電気機器を回路から切り離し、漏電の原因となった機器がないかを調査します。機器が漏電の原因でない場合は、コンセントやスイッチ、配線に対して調査を行い、漏電箇所を絞り込みます。

漏電があった場合の修理工事

漏電の調査を行った結果、漏電の原因が分電盤、ブレーカー、配線などの住宅の設備だった場合(家で使用している家電製品などが原因ではなかった場合)は、電気工事業者による設備の修理や交換が必要です。

ここでは、修理工事の費用の相場を紹介します。なお、あくまで工事そのものにかかる費用のみであり、作業者の出張費などは別途かかる場合があります

漏電の修理工事の費用相場

修理工事の内容 費用相場
(別途作業者の出張費などがかかります)
ブレーカーの修理交換 10,000円~30,000円
分電盤の修理交換 30,000円~150,000円
コンセント/スイッチの交換 4,000円~10,000円
配線の引き直し 5,000円~20,000円以上
(数十万円におよぶ可能性あり)

ブレーカーの修理交換

漏電ブレーカーや安全ブレーカーが故障・劣化している場合は修理または交換する必要があります(アンペアブレーカーの場合は電力会社の持ち物なので、交換や費用負担は電力会社の役割です)。1個1万円程度以上の費用がかかります。ブレーカーの種類や性能によって費用は変わります

分電盤の修理交換

ブレーカーが配置されている分電盤そのものが故障や劣化している場合は、交換する必要があります。ブレーカーの部品のみを交換する場合と比べると高額で、3万円程度はかかるでしょう。住宅内の電気回路の数や、分電盤の機能によって費用は変わります。

コンセント/スイッチの交換

プラグを挿し込む場所であるコンセントや、照明などのスイッチが故障・劣化している場合も、一般的に交換することになります。コンセントやスイッチは消耗品であるため、修理という扱いになるケースはまれでしょう。交換費用が高くつく可能性は低く、1箇所4千円程度からになると考えておきましょう。

配線の引き直し

配線が損傷しているケースでは引き直しが必要です。引き直し作業の難易度が低い場合は、5千円程度で実施できます。ただし、配線は住宅の天井、床下、壁の中などを通っているので、壁に穴をあけたりする必要があることもあり、その場合は、費用が高くなる傾向があります。

古い住宅であれば、配線が全体的に経年劣化している可能性もあるため、配線を引き直す範囲が広くなり、数十万円の費用がかかる可能性もあります。

費用を保険でカバーできるケース

漏電に関するトラブルによってかかった費用は、火災保険でカバーできる場合があります。ただし、状況は限られます。具体的には突発的・予測不可能な漏電によって「火災が発生した場合」と「建物の電気機器が故障した場合」です。

詳しく説明すると、保険金がおりる対象となるためには、まずは漏電の発生が「突発的・予測不可能である」と認められる必要があります。住宅の分電盤などの電気設備や、住宅で使用している電気機器が老朽化していたために漏電火災が起きたというケースでは、老朽化による漏電が「予測可能」だとみなされ、保険金の支払いの対象にならない可能性が高くなります

電気設備の施工不良が原因の漏電だった場合も、保険会社による補償の対象とはならないことが一般的です。このケースでは施工業者に責任があると認められれば、業者側が費用を補償することになるでしょう。

また、火災が発生した、電気機器が故障したといった設備に対する被害が発生しないと、保険金は支払われません。漏電による直接的な被害は出ていないけれど電気工事業者に調べてもらった場合は、保険の対象にならないのです。とはいっても、火災や電気機器の故障は、予防できるならばそれに越したことはありません。保険の対象にならなくても、出費を惜しむことはしないようにしましょう

なお、火災は発生せず電気機器が故障しただけの場合に、火災保険の対象となるかはケースバイケースです。「電気的・機械的事故担保特約」を契約していない場合は、故障の被害は補償されないので注意が必要です。

また、対象となる電気機器は、建物に固定されていて容易に取り外せないもの、例えば分電盤、給湯器、エアコン、床暖房、キッチンと一体化しているタイプの食器洗浄機(据え置き型は不可)、太陽光発電設備などに限られます。プラグをコンセントに挿し込むだけで使用できる一般的な家電製品、言い換えると「家屋の一部であるとみなせない」物は、保険の対象外であることを踏まえ、保険会社への請求手続を進めていきましょう。

漏電の疑いがあるときに自分でできる対処法

既に説明したように、漏電の本格的な調査や、漏電箇所の修理は電気工事士でなければ実施できません。しかし、簡単な調査は自分でもできるので、手順を紹介します。

【注意】感電や火災の危険があるため、無理は禁物

以下で紹介する手順は、電気工事士の資格を持っていなくても実施できる内容です。しかし、電気には感電や火災を引き起こすリスクがあります。また、電気は目に見えないので、どこに触れたら感電する可能性があるかといったことを、電気に関する知識がない人が判断することは困難です。不安がある場合は、無理をせずに電気工事業者に漏電の調査を依頼しましょう

ブレーカー操作による漏電箇所の特定方法

漏電箇所の特定

漏電ブレーカーが落ちてしまう場合には、分電盤のブレーカーのつまみを操作することで、どの部屋で漏電が発生しているのかを特定できます。手順は下記のとおりです。分電盤やブレーカーの表面に、漏電した電気が流れる可能性が否定できないので、ブレーカーを操作する際にはゴム手袋(できれば電気の絶縁性能が保証されている低圧ゴム手袋)を装着しましょう。

  1. 安全ブレーカーを全て落とす
  2. 漏電ブレーカーを上げる
  3. 安全ブレーカーを1つずつ上げていく
  4. 安全ブレーカーを上げたときに漏電ブレーカーが落ちた場合は、その安全ブレーカーを再度落とす
  5. 漏電ブレーカーを上げる
  6. 漏電ブレーカーが落ちたときに上げた安全ブレーカーは落としたままにしておき、他の安全ブレーカーを1つずつ上げていく

以上の手順を踏めば、漏電が発生している回路がどれなのかがわかるので、問題が起きている回路以外では通常通りに電気が使用できます。

ここから、より詳細な漏電発生個所を探ることもできます。手順は以下の通りです。

詳細な漏電箇所の特定方法

  1. 漏電が発生していることがわかった箇所の電気機器のプラグを全て抜き(スイッチが入っている場合は切る)、照明も消す
  2. 落としたままにしておいた安全ブレーカーを上げる(漏電ブレーカーが落ちた場合は終了) 
  3. 抜いておいたプラグを再度コンセントに挿し込んでいく
  4. 電気機器や照明のスイッチを1つずつ入れていく

2の手順の時点で漏電ブレーカーが落ちた場合は、その回路の配線や安全ブレーカー自体に問題が起きていると考えられます。電気工事業者でなければ詳細な調査や修理はできません。安全ブレーカーを再度落としてから、漏電ブレーカーを上げましょう。

3や4の手順で漏電ブレーカーが落ちた場合は、そのとき操作した電気機器・照明が漏電の原因です。その器具の使用を止めてから漏電ブレーカーを上げれば、通常通り電気を使用できます。該当する機器が使用できないと困る状況でなければ、修理のために電気工事業者を呼ぶ必要もありません。

以上の手順を実施しても原因が特定できない場合は、電気工事業者に調査を依頼してください。

漏電ブレーカーの動作確認

漏電ブレーカー

漏電が疑われる状況が発生しているけれど、漏電ブレーカーが落ちていないという場合は、漏電ブレーカーが故障している可能性が考えられます。漏電ブレーカーが正常に動作するかどうかをテストしてみましょう。なお、テストを実施した結果、漏電ブレーカーが正常だった場合は漏電ブレーカーが落ちて住宅全体が停電するので、停電したら困る状況では実施しないでください。

テストの方法は、漏電ブレーカーに設けられている「テストボタン」と書かれたボタンを押すだけです。漏電ブレーカーのつまみが落ちて停電したなら、漏電ブレーカーは正常に機能しています。漏電ブレーカーが検知できる大きさ(一般的に15mAまたは30mA)以上の漏電は発生していません。

漏電ブレーカーが落ちるのと同時に「漏電・過電圧表示」などと表記されているボタンが飛び出ているはずです。このボタンを押し戻してから、漏電ブレーカーを上げてください。

テストボタンを押しても何も起きない場合は、漏電ブレーカーが故障しています。電気工事業者に漏電ブレーカーの交換を依頼してください。漏電している疑いがある状況ならば、漏電の調査も同時に依頼した方がよいでしょう。

漏電ブレーカーのテストボタンによる動作確認は、住宅の電気設備に特に問題が起きていない場合でも、定期的に行った方がよいでしょう。知らず知らずのうちに漏電ブレーカーが故障していて、漏電が発生しているのにわからなかった、という事態を防ぐことができます。

測定器による漏電チェック

漏電箇所を特定できる測定器電気を検出したり、配線のショート(短絡)を検出したりできる測定器を用いると、漏電箇所を細かくチェックできます。無資格でもできる作業ではありますが、感電のリスクがあるため注意が必要です。

また、測定器は主に電気設備の工事や維持管理などの業務に従事する人に向けて作られています。電気に関する専門知識がない一般の方には扱いが容易ではなく、測定した結果の意味を正確に理解することも難しいでしょう。測定器の購入には、安くても数千円、高価なものなら数万円かかることも珍しくありません。たまたま測定器を持っていて、使い方も知っている、あるいは使い方を教えてくれる人がいるというような特別な場合を除いて、購入して自分で漏電チェックをするようなことは止めておきましょう

「検電器」の中には、感電チェック機能がついているものがあります。人が触れて感電する場所に当てると、ランプの点灯で知らせてくれます。触れると感電する場所に直接当てて使うタイプの測定器なので、取り扱いには細心の注意が必要です。

「クランプメーター」は、端のリング状になっている部分で電線などを囲うと、流れている電流を測定できる装置です。異常な大きさの電流が流れていないかがわかります。

「絶縁抵抗計(メガー)」は、ある2つの場所の間の電気抵抗を測定する装置です。ブレーカーを落とすなどして電気を遮断した状態で、配線の端子に絶縁抵抗計の端子を接触させ、抵抗を測定します。絶縁されているべき場所がショートしていないか、抵抗値が低下していないかをチェックできます。

賃貸/分譲マンション/戸建て 相談するべきかどうかの目安

漏電が発生しているとき、漏電が疑われるときに、自分でできる対処内容は限られます。電気設備に関する専門業者に相談した方がよい状況を紹介します。

また、住宅が賃貸か分譲か、マンションか戸建てかによって、最初に相談するべき相手が変わります。誰に相談するべきなのかもあわせて紹介します。

自分で対処することが難しい状況

下記のような状況のときは、自力で対処せずに電気工事業者に対処を依頼しましょう。特に急を要する状況では、業者への連絡をためらうべきではありません。

  • 漏電箇所や原因が特定できない
  • 漏電箇所が疑われる箇所が複数ある
  • 漏電ブレーカーを入れてもすぐに落ちる
  • 電気設備から焦げたにおいや煙が出ている
  • 壁や天井の中などで漏電が起こっている可能性がある

ただし、賃貸住宅の場合は、自分で電気工事業者に連絡せずに、まずは大家さんまたは管理会社に連絡してください。詳しくは後述します。

漏電箇所や原因が特定できない

分電盤のブレーカーを1つずつ上げていくことで漏電箇所を特定する方法や、測定器を使って特定する方法を紹介しましたが、これらの方法でわからなかった場合は、自力での特定は不可能です。専門業者に調査を依頼しましょう。

漏電が疑われる箇所が複数ある

漏電箇所の特定を試みた結果、漏電が複数箇所で発生していることがわかったという場合は、漏電を引き起こす要因が広範囲で発生していると考えられます。例えば、住宅の配線が全体的に経年劣化しているというケースです。専門知識がなければ手に負えないトラブルなので、業者を呼びましょう。

漏電ブレーカーを入れてもすぐに落ちる

漏電ブレーカーを「入」にしてもすぐにまた落ちてしまうという場合は、電気設備の故障などによって、漏電が常に発生しやすい状態になってしまっていると考えられます。漏電したときの電流によって、設備がさらに損傷する可能性や、感電したり火災が発生したりする可能性も考えられるので、無理に漏電ブレーカーを何度も入れることは避けて、専門業者に連絡しましょう。

【緊急】電気設備から焦げたにおいや煙が出ている

住宅の電気設備から焦げ臭いにおいや煙が出るのは、漏電した電気によって異常に加熱されている状態だと考えられます。直ちにその部屋の安全ブレーカーを落として電気設備の使用を止めましょう。そして専門業者へ連絡を。

壁や天井の中などで漏電が起こっている可能性がある

雨漏りが原因の漏電といったケースでは、屋根裏や壁の中の配線に不具合が生じている場合があります。配線の不具合の場合は、自力で漏電箇所を特定することはできません。また、修理には電気の専門業者に加えて、建物の修理業者も手配する必要があります。漏電の修理に対応してくれる業者の中には、建物の修理にも対応している業者もあります。

賃貸住宅のケース

電気工事の専門業者に調査や修理を依頼する必要がある状況でも、お住まいの住宅が賃貸の場合は、まずは大家さんまたは管理会社に連絡しましょう。電気設備を適切に維持管理する責任は住宅の所有者にあるので、電気工事業者を呼ぶ必要がある場合も、業者に依頼をしたり費用を負担したりするのは大家さんか管理会社になります。

所有者に無断で住人が電気工事業者を呼んで電気設備に触れると、トラブルのもとになりかねません。業者を呼ぶのにかかった費用の負担を、拒否される可能性もあるでしょう。

分譲マンションのケース

分譲マンションの場合は、居室の設備については住人の所有物なので、調査や修理を行うときには住人が自分で電気工事業者を呼ぶことになり、費用負担も住人が行います。

ただし居室の外の、共用部分の設備のトラブルの場合は、マンションの管理者が対応することになります。トラブルが起きているのが共用部分なのか居室内なのかを正確に判断することは難しい場合もあるので、まずはマンションの管理者に連絡するのがよいでしょう。

戸建て(持ち家)のケース

戸建て住宅(持ち家)の場合は、基本的に自分で電気工事業者を呼ぶことになります。

ただし、住宅の外にある「責任分界点」よりも外側の設備や、電力会社の持ち物である電力メーター・アンペアブレーカーに問題が起きていると考えられる場合は、電力会社に連絡することになります。

責任分界点とは電力会社の電線から電気を引き込む引込線と、住宅の電線とを接続する場所のことで、一般的に色付きのチューブやテープが巻かれています。

なお、ここでの「電力会社」とは、住人が電力契約を結んでいる会社のことではなく、その地域への送電を担っている「一般送配電会社」のことを指します。例えば、関東地方であれば「東京電力パワーグリッド」という会社です。

信頼できる電気工事業者の見極め方

電気工事業者に漏電の調査や修理を依頼するときは、なるべく費用を安くあげたいと考えるのは自然なことでしょう。しかし、電気設備は日々使用するものであり、また、トラブルがあれば感電や火災にもつながる設備です。何よりも安全に調査や修理をしてもらえること、修理してもらった設備を安心して長期間使用できることが重要です。信頼できる電気工事業者に依頼しましょう。

また、焦って業者との契約を結ばないようにしましょう。電気設備のトラブルの中には、至急対応した方がよいものがあることは確かなのですが、そこに付け込み高額な契約を早急に結ぶように迫る悪質な業者も存在します。Webサイトなどでは安価な料金をうたっておきながら、実際にはあれやこれやと追加料金を請求してくるというケースもあり、レスキュー商法と呼ばれて全国的に問題になっています。

参考

暮らしのレスキューサービスに関する悪質商法にご注意!
(例示されているのは水回りに関するトラブルですが、注意すべき点は電気設備のトラブルについても同様です)

停電、漏電修理で不要な作業!思わぬ高額請求! – 埼玉県

以下で、信頼できる電気工事業者を見極めるためのポイントを紹介します。

電気工事士などの資格を持っている

既に説明したように、電気設備に関する工事は電気工事士の資格を持っている人でなければ実施できません。業者に電気工事士の資格保有者が在籍していることや「電気工事登録業者」であることを、業者の公式サイトなどを参照して必ず確認しましょう。登録業者に名前がない場合は、違法な業者であると判断せざるをえません。

また、依頼した作業を行う当日にも、作業者の中に電気工事士がいることを確認してください。

事前に明瞭な料金提示がある

業者に作業を依頼する際は、事前に見積を出してもらいましょう。そもそも、電気設備の調査や修理にかかる全体的な費用は、現地を見なければわからないことも多いため、無料または低価格で現地調査をした上で、見積書を出してくれることが望ましいです。最初からあたかも支払額が格安(例えば1,000円~3,000円程度)で済むかのような料金を提示してくる業者は、疑いの目で見た方がよいでしょう。

また、見積だけのつもりが、現地調査後にいきなり設備の交換などを勧められるケースもあるので、焦って契約締結しないよう注意してください。その時点で費用が発生する作業を依頼するつもりがないのであれば、きっぱりと断ることも時には必要です。

作業内容をまとめた一式の金額だけではなく、作業項目や交換する部品ごとの金額が見積書に記載されていることも、信頼できる業者かどうかの目安にしましょう。

見積が不明瞭な業者に依頼すると、後で追加請求が行われる可能性も考えられます。必要な作業内容が盛り込まれていない可能性や、逆に全く不要な内容が含まれて料金が決められている可能性もあるので、注意しましょう。特に悪質な業者の場合、実際には実施していない作業の費用まで請求してくるケースもありえます。

分かりやすく丁寧に説明をしてくれる

電気の専門知識がない人にとって、電気設備とは理解することが難しい設備です。しかし、だからこそ、知識のない人にもわかりやすくていねいな説明をしてくれるかどうかが、その業者の実力や誠実さをはかる上での目安になります。

まとめ

漏電の詳細な調査や修理は、電気工事業者でなければできず、自力での対処はできません。賃貸住宅であれば、電気工事業者に自分から連絡はせずに、まずは大家さん・管理会社に連絡しましょう。

分譲マンションや持ち家の場合、費用は基本的に漏電調査や修理の費用は住人の負担となりますが、依頼する費用を節約するために自分で作業を行うことは(ご自身で電気工事士の資格を持っている場合は別として)危険な上に違法です。絶対にやめてください。

電気工事業者に作業を依頼する際は、少しでも費用を浮かせたくなるところです。しかし、電気設備は毎日使う上に、問題があれば事故にもつながる設備なので、安さよりも安全性が何より重要です。必ず、信頼できる業者に依頼しましょう。

この記事の監修者兼ライター

監修者画像

小野雄人

東京大学工学部電気工学科・東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修士課程を修了。鉄道の信号部門に関連する研究開発業務や、鉄道会社の現場での勤務を経験。2022年に独立・フリーライターに転身、記事の執筆や監修・編集を手掛けている。保有資格:技術士(電気電子部門)

ご相談の流れ

フォームから問い合わせ

STEP 1

フォーム送信

STEP 2

相談内容に応じてプロが対応

電話から問い合わせ

STEP 1

電話

STEP 2

コールセンターにてヒヤリング

STEP 3

相談内容に応じてプロが対応

日常のお困り事解決はお任せください

日常生活で感じる小さな困りごとやトラブル、どんなことでもお気軽にご相談ください。私たちが一緒に解決策を見つけ、安心できるサポートをご提供します。