【徹底解説】セメント瓦の耐用年数!塗装や葺き替えタイミングも紹介


外から屋根を見たとき、色あせやひび割れがあると「屋根は大丈夫だろうか…」と不安になるものです。
セメント瓦の耐用年数は、一般的に30~40年といわれています。瓦の寿命は屋根を塗り替えても延ばせません。もしご自宅が築30年を過ぎているのなら、葺き替えを検討しましょう。
また、たとえ築30年経っていなかった場合でも、塗り替えや補修は必要になります。なぜなら、セメント瓦はメンテナンスを怠ると、瓦自体がもろくなり雨漏りしやすくなってしまうからです。
この記事では、セメント瓦の耐用年数や劣化の兆候に関する正しい知識にくわえて、塗装や葺き替えなどのタイミングもわかりやすく解説しました。
記事を読めば「今、自分の家は何をすべきか」がわかります。 屋根の健康を守ることは、家族の安全を守ることです。ご自宅の築年数や状況にあったメンテナンスを計画的におこない、家族と長く安心して暮らしましょう。
この記事でわかること 目次 セメント瓦とは、セメントと砂に水を混ぜて造られた瓦のことです。耐久性・防火性・デザイン性に優れており、日本瓦より安価で製造しやすかったことから1970〜1990年代に日本全国で普及しました。 セメント瓦の長所と短所は下記のとおりです。 セメント瓦のメリットは、丈夫で見栄えが良く、低価格な点です。しかし日本瓦と違って、塗り替えなどのメンテナンスが必要になる点がデメリットといえます。 セメント瓦と日本瓦は形状が似ています。そのため、ご自宅の瓦がセメント瓦か日本瓦か判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。 下記に瓦の判別方法をまとめました。ご自宅の瓦がどのタイプなのか把握するためにも、下記を確認しておきましょう。 セメント瓦は表面に施された塗装によって水分の侵入を防いでいます。この塗装が瓦そのものを保護する役割を果たしているのですが、長年の風雨や紫外線にさらされると徐々に劣化していきます。そのため、年月が経つにつれて色あせしたり、塗装が少しずつ剥がれたりして、表面がザラザラとした質感になるのが特徴です。 いっぽう、日本瓦(陶器瓦・いぶし瓦)は、粘土を形作って焼きあげることから、全体的に丸みがあり、表面はツルツルし光沢があります。 ご自宅に予備の瓦がある場合は、裏面を見てみましょう。コンクリートブロックのようにザラザラでグレー色であればセメント瓦で、ツルツルしていれば日本瓦です。日本瓦の場合は、裏面がレンガのようにオレンジ色であれば陶器瓦、表面と同じ色であればいぶし瓦となります。 セメント瓦とその他屋根材の耐用年数は、下記のとおりです。 セメント瓦の耐用年数は30〜40年で、日本瓦(和瓦)の40〜100年に比べると短いことがわかります。 セメント瓦の劣化が進むと、下記の症状が現れるのが特徴です。 それぞれの劣化症状について詳しく解説します。 セメント瓦は、紫外線や風雨の影響により塗膜が劣化します。 具体的な劣化症状は下記のとおりです。 色あせは、劣化の初期症状です。さらに症状が進むと、塗膜の膨れや剥がれて、瓦の表面に触れると白い粉が付着するチョーキング現象がおこります。 また、カビやコケの発生も塗膜が劣化したサインです。塗膜の防水性がなくなると、雨水を吸収しやすくなり表面が湿った状態が続くため、コケやカビが繁殖しやすくなります。 セメント瓦の塗膜が剥がれ雨水が浸入すると、セメントの成分であるカルシウムが流出し表面が風化します。 風化をしめす具体的な症状は下記のとおりです。 セメント瓦の主成分であるカルシウムが流出すると、瓦の中には砂だけが残るため、瓦の表面がザラザラしてきます。瓦の内部はスカスカになり、瓦自体の強度が弱くなって割れやすくなります。 セメント瓦のひび割れは屋根内部に雨水が浸入するため、注意が必要です。 ひび割れの主な原因は下記のとおりです。 セメント瓦の塗膜が剥がれると、瓦が水分を含んで膨張・乾燥して収縮をくり返すため、セメント瓦に負荷がかかりひび割れが発生します。 また寒い地域や沿岸部では、瓦の凍結や海風に含まれる塩分で瓦が劣化するため、他の地域よりもひび割れしやすい特徴があります。 セメント瓦では、瓦のずれや割れが発生することもあります。 おもな原因は下記のとおりです。 瓦がずれた箇所や割れた部分から雨水が浸入すると、下地材の防水シートや野地板(屋根の下地となる板)まで傷める原因となります。 劣化したセメント瓦は、カビやコケも生えやすくなります。コケや藻はいちど生えると、雨でも流れ落ちません。コケが根をはると、瓦の表面に水分が長くとどまりやすくなるため、劣化スピードが早くなってしまいます。 自分でセメント瓦の劣化を確認するには、下記の3つの方法があります。 おすすめの高所カメラ・ドローンは下記のとおりです。 出典:ルミカ(LUMICA) Bi Rod 10C-11500(三脚なし・専用フットペダル付)参考価格118,800円 出典:DJI Neo Fly Moreコンボカメラ搭載 小型ドローン 参考価格:51,480円 セメント瓦のメンテナンス周期・タイミングは下記のとおりです。 定期的な点検は、年1回ほど実施しましょう。季節の変わり目や梅雨の前に瓦の状態を確認しておくと安心です。 点検時の確認項目と点検方法は下記のとおりです。 ※棟瓦:瓦屋根の面と面が合わさる頂上部分に積まれた瓦のことで、雨漏りを防ぐ役割がある セメント瓦の塗装をおこなうタイミングは、10~15年ごとが目安になります。なぜなら、塗膜の効果は10年〜15年で薄れるためです。 ただし前述したように、下記の症状を発見したら塗り替えの検討時期です。 写真:チョーキング(外壁の表面が触ると粉状に白く剥がれ落ちる現象) 上記のような場合は10年を待たず、早めにメンテナンスをおこないましょう。 工事の方法は、専門業者に相談しましょう。 築20年を経過していれば、屋根材を新しくする「葺き替え工事」を検討しはじめるのがおすすめです。セメント瓦だけではなく、瓦の下に設置された防水シートの寿命も近づいています。 防水シートは、セメント瓦をすべて取り除くタイミングでしか張り替えができないため、屋根を葺き替える際は防水シートも交換するようにしましょう。 屋根の葺き替えは、下記のいずれかのケースで必要です。 セメント瓦の耐用年数は30年〜40年のため、屋根はおそくとも築後30年までには葺き替えておくほうがおすすめです。瓦全体が風化によりもろくなっているため、塗装で耐久性が復活することはありません。 また、これまでの塗装回数も葺き替えの目安になります。塗装の耐用回数は多くても2~3回が限度です。それ以上になると、塗膜が厚くなりすぎて割れやすくなります。また塗料が瓦と瓦のスキマを埋めてしまい、雨水をうまく排水できなくなり、雨漏りしやすくなります。 アスベスト(石綿)とは、吸い込むと健康被害を引きおこす繊維状の鉱物です。 2004年以前に製造・施工されたセメント瓦であれば、アスベストを含んだ製品の可能性があります。セメント瓦を葺き替える場合はアスベスト対策が必要かどうか確認し、アスベストが瓦に含まれていれば、飛散しないよう安全に処理しなければなりません。 セメント瓦を葺き替える際は、事前に下記の手順で瓦にアスベストが含まれているかどうかを確認するのが一般的です。 アスベストを含んでいた場合は、特殊な処理方法で撤去・処分するため、費用が加算される可能性があります。アスベストの含有は目視では判断できないため、早い段階で専門業者へ相談するのがおすすめです。 セメント瓦を葺き替えるメリットは、下記のとおりです。 たとえば、ガルバリウム鋼板のような軽量で耐久性の高い屋根材を選ぶことで、屋根の重量が軽くなるので耐震性がアップします。 また屋根瓦を撤去するタイミングで瓦の下にある防水シートを取り換えれば、屋根全体を新築同様の状態にできるため、雨漏りのリスクを大幅に減らせます。 セメント瓦のメンテナンス費用相場は、下記のとおりです。 ※足場代10〜30万円や諸経費が別途必要 部分補修の費用相場は下記のとおりです。 ※足場代10〜20万円や諸経費が別途かかる場合あり セメント瓦の塗装にかかる費用相場は、下記のとおりです。 ※建坪30坪の戸建て住宅の場合(足場代10〜20万円や諸経費が別途必要) 塗装にかかる費用は、使用する塗料の種類やグレードによって異なります。一般的につかわれるのはシリコン樹脂塗料で、耐用年数は7~15年が目安になります。より長もちする塗料を選ぶなら、耐用年数が10~15年のラジカル制御型塗料、15~20年のフッ素樹脂がおすすめです。 セメント瓦から葺き替えをする場合の費用相場は、下記のとおりです。 ※建坪30坪の戸建て住宅の場合(足場代を含む) ガルバリウム鋼板は、高い耐久性とメンテナンスの手軽さから人気があります。また瓦よりも軽いので、住宅の耐震性がアップする点も魅力です。ただし、セメント瓦とガルバリウム鋼板はデザインがまったく異なるので、葺き替え後は以前と外観イメージがガラリと変わります。 セメント瓦からなるべく外観を変えずに、耐久性のある屋根材に葺き替えたい場合には、日本瓦もしくは防災瓦がおすすめです。ただし、費用は他の屋根材に比べて高くなります。 お得にセメント瓦をリフォームするためにも、下記の方法を検討しましょう。 それぞれを詳しく解説します。 セメント瓦のリフォームには、国や地方自治体から補助金がでるケースがあります。 各補助金に関する詳細は下記のとおりです。 「屋根の耐風診断及び耐風改修に関する事業」などを利用すれば、台風や地震対策として最大55.2万円/棟の補助金がもらえるケースもあります。 屋根だけでなく家全体の大規模リフォームをおこなう場合は、長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金が活用できる可能性があります。 もしも自然災害で屋根が壊れた場合、その修理費用を火災保険で補償してもらえることがあります。 一般的な適用条件は下記のとおりです。 経年劣化による雨漏りは、保険適用外になります。また屋根材のグレードを上げる場合も火災保険は適用されません。 外壁や屋根塗装で一般的につかわれる塗料の耐用年数は、10~15年程度です。外壁塗装のタイミングとあわせて屋根を工事すると、それぞれで工事をおこなうよりも足場代15~30万円を節約できます。 屋根業者を選ぶときのポイントは4つあります。 屋根工事のなかでも、瓦屋根の工事は専門性が高い分野といえます。工事には、瓦の種類や特性、施工方法に詳しい業者を選ぶようにしましょう。 業者選びで失敗しないためには、過去の施工事例や保有資格、業界での経験年数などを確認することが大切です。質問に対して具体的でわかりやすい説明ができるかどうかも、専門知識の有無を判断する目安になります。 インターネット上の口コミサイトや、知人からの紹介情報は貴重な判断材料となります。注目すべきポイントは、工事の品質だけでなく、アフターサービスの対応や、トラブル発生時の誠実さです。 「工事後もずっと付き合っていける業者かどうか」を判断するようにしましょう。 信頼できる屋根業者は、現地調査をおこない、詳細な報告書を提出するのが一般的です。報告書には現状の屋根の状態、問題点、必要な工事内容などが具体的に記載されています。 報告書の内容が曖昧だったり、現地調査なしで見積もりを出したりする業者は、追加料金やトラブルが発生しやすいので避けるようにしましょう。 見積書を受け取ったら内容を確認し、使用する部材や作業内容が詳しく記載されているか確認しましょう。「〇〇修理一式:〇〇万円」といった簡易的なものではなく、しっかりと費用の内訳が記載されているかを確認することが大切です。 チェックする内容 本記事では、セメント瓦の耐用年数や適切なメンテナンスのタイミングなどについて解説しました。 セメント瓦のメンテナンスのポイント A.築30年以上または3回以上塗り替えている場合は、屋根の葺き替えが必要な時期にきているといえます。 セメント瓦の塗装は、10〜15年ごとが目安になります。 >>【資産価値を左右】セメント瓦のメンテナンス周期・タイミング 2004年以前に施工されたセメント瓦には、アスベストが含まれている可能性があります。工事前に専門業者へ確認するのがおすすめです。
セメント瓦の基礎知識
長所
短所
ご自宅の瓦がセメント瓦かどうか判別する方法
判別方法
セメント瓦
日本瓦
(陶器瓦・いぶし瓦)
表面の塗装をみる
塗料の剥がれや色あせ
粘土の風合いや光沢
表面の質感をみる
ザラザラ
ツルツル
裏面の色と質感をみる
セメントブロック
レンガ
セメント瓦の耐用年数は30~40年
屋根材
耐用年数
セメント瓦
30〜40年
日本瓦(和瓦)
40~100年
ガルバリウム鋼板
30~40年
スレート(コロニアル)
15~30年
軽量セメント瓦
30~40年
金属瓦(ステンレス)
30~50年
セメント瓦の劣化症状
塗膜の劣化
再塗装など早めの対策を検討しましょう。表面の風化
ひび割れ
そのまま放置すると雨水の侵入で割れや瓦の劣化が進むため、割れた瓦は部分交換するのがおすすめです。瓦のずれ・割れ
瓦のずれや割れを見つけたら、割れた瓦の交換や屋根全体の葺き替えなどを検討しましょう。カビやコケの発生
自分でセメント瓦の劣化を確認する方法
確認方法
内容
地上から見上げる
瓦にズレや欠け・色の変化・コケの発生がないかなど瓦屋根の状態を目視で確認
カメラ・スマホを使う
ズーム機能により遠い場所から細かいひび割れの確認や劣化している箇所を見つけて撮影
高所カメラ・ドローンを使う
2階の屋根まで詳しく確認
可能なかぎり地上から確認し、屋根にのぼる必要がある場合は専門業者に依頼しましょう。【資産価値を左右】セメント瓦のメンテナンス周期・タイミング
住宅の寿命を縮めないためにも、適切なタイミングでメンテナンスをおこないましょう。定期点検:年1回程度
点検時の確認項目
点検方法
屋根の塗り替え・補修: 10〜15年ごと
屋根の葺き替え:20年目以降
項目
耐用年数(目安)
防水シート
20〜30年
セメント瓦
30〜40年
葺き替えが必要なケース
早めに葺き替えておくほうが得策です。【注意】アスベスト対策が必要な場合がある
葺き替え工事をするメリット
セメント瓦のメンテナンス費用相場
メンテナンス項目
費用相場
部分補修
3〜25万円
塗装
20〜50万円
葺き替え
150〜300万円
部分補修の場合
修理内容
費用相場
瓦の差し替え
3~5万円
コーキング補修(瓦のひび割れ)
3~5万円
防水シートの部分補修
5万円前後
棟瓦の積み直し(部分)
10〜25万円
塗装の場合
塗装の種類
費用相場
耐用年数
シリコン樹脂塗装
20~30万円
7~15年
ラジカル制御型塗料
25~30万円
10~15年
フッ素樹脂塗装
30~40万円
15~20年
葺き替えの場合
屋根材
費用
耐用年数
ガルバリウム鋼板
150~210万円
30~40年
日本瓦(和瓦)
170~230万円
50~100年
防災瓦
180~240万円
50~100年
スレート(コロニアル)
100~170万円
15~30年
軽量セメント瓦
130~240万円
30~40年
金属瓦
180~300万円
40~80年
施工業者と相談しながらご自身に合った屋根材を選びましょう。お得にセメント瓦をリフォームできる方法
補助金を活用する
事業・制度
補助対象
補助率・補助額
屋根の耐風診断及び耐風改修に関する事業
瓦屋根の耐風診断
診断費の2/3
最大2.1万円/棟
瓦屋根の耐風改修工事
工事費の23%
最大55.2万円/棟
長期優良住宅化リフォーム推進事業
性能向上リフォーム工事に要する費用
子育て世帯向け改修工事に要する費用補助対象費用の1/3
最大80から160万円/棟など
まずは、施工業者に問い合わせて、つかえる補助金があるかどうか聞いてみましょう。火災保険を活用する
火災保険の活用する際は注意しましょう。外壁のタイミングに合わせる
【屋根業者の選び方】後悔しないための4つのポイント
瓦の専門知識がある業者を選ぶ
口コミや評判を調べる
現地調査をして報告書を提出してもらう
見積もりの書き方をチェックする
まとめ
劣化のサインやメンテナンスサイクルなどを正しく理解して、ベストな判断をしましょう。瓦屋根の耐用年数でよくあるQ&A
セメント瓦の葺き替え時期は?
セメント瓦の塗装は何年ごとにするべきですか?
セメント瓦にアスベストは使われていますか?
この記事の監修者

工藤あきこ
福岡在住の建築士ライター。設計事務所でのアシスタントを経て、リフォーム会社の営業設計として勤務。補修からフルリノベーションまで幅広いリフォームを担当した。2022年に建築専門ライターに転身。現在は、記事の監修や執筆、ブログ「新・リフォームの歩き方」を運営する。日々の幸せは夫や息子と談笑すること。
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